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詩人として、小説家として、19世紀アメリカ文学の中で特異な光を放つエドガー・アラン・ポー。彼の詩は悲哀と憂愁と幻想に彩られ、ボードレールのフランス語訳によってフランス象徴主義の詩人たちに深い影響を与えたことはよく知られている。本書には、ポー自身が『詩の原理』の中で創作過程を明かしたことで著名な「大鴉」のほか「ヘレンに」「アナベル・リイ」などの代表作を収める。 …
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「モルグ街の殺人」は、1841年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編推理小説。ポー自身が編集主筆を務めていた『グレアムズ・マガジン』4月号に掲載された。史上初の推理小説とされており、天才的な探偵と平凡な語り手、結末近くでの推理の披露、意外な犯人像など、以後連綿と続く推理小説のジャンルにおける原型を作り出した。また密室殺人を扱った最初の推理小説とも言われている。 …
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『ユリイカ』は、1848年に刊行されたエドガー・アラン・ポー最晩年の著作。「散文詩」というサブタイトルとともに「物質的宇宙ならびに精神的宇宙についての論考」という副題が付けられており、科学的知見を借りながらも、論証的にではなく直感的に宇宙の本質を記述した壮大な長編論考である。また人間と神との関係についても触れられており、ポーはここで神を書物の著者と比較している。冒頭にはアレクサンダー・フォン・フンボルトへの献辞がある。 …
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「ライジーア」は、1838年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編小説。語り手と結婚した神秘的な美女ライジーアが、その死後語り手の二人目の妻の体を借りて甦るという筋のゴシック風の小説であり、ポーの他の作品「モレラ」「エレオノーラ」などと「美女再生」のモチーフを同じくする。 …
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『大鴉』は、アメリカ合衆国の作家エドガー・アラン・ポーが1845年1月29日に発表した物語詩。その音楽性、様式化された言葉、超自然的な雰囲気で名高い。心乱れる主人公の元に、人間の言葉を喋る大鴉が謎めいた訪問をし、主人公はひたひたと狂気に陥っていく、という筋である。学生であろうと指摘されることの多い主人公は、恋人レノーアを失って嘆き悲しんでいる。大鴉はパラスの胸像の上に止まり、「Nevermore」という言葉を繰り返し、主人公の悲嘆をさらに募らせる。詩の中のいたるところに、ポーは伝承やさまざまな古典の隠喩を行っている。 …
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「盗まれた手紙」は、エドガー・アラン・ポーの短編小説。「モルグ街の殺人」「マリー・ロジェの謎」に続き、C・オーギュスト・デュパンが登場する推理シリーズの三作目にあたる。ある大臣が政治的な陰謀から「とある貴婦人」の私的な手紙を盗み出し隠匿するが、依頼を受けた警察がいくら捜索しても見つけることができない、という事件をデュパンが鮮やかに解決する。しばしば「デュパンもの」三作中で最も完成度が高いとされる作品である。『ザ・ギフト』1845年号初出。1845年に作品集『エドガー・A・ポーの物語集』に収録された。 …
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『赤死病の仮面』は、1842年に発表されたエドガー・アラン・ポーの短編小説。国内に「赤死病」が蔓延する中、病を逃れて臣下とともに城砦に閉じこもり饗宴に耽る王に、不意に現れた謎めいた仮面の人物によって死がもたらされるまでを描いたゴシック風の恐怖小説である。『グレアムズ・マガジン』5月号に初出。 …