『魔の山』は、1924年に出版されたトーマス・マンによる長編小説。ドイツ教養小説の伝統に則ったマンの代表作の一つである。 作品はハンス・カストルプ青年が、第一次世界大戦前にスイスのアルプス山脈にあるダボスのサナトリウムに従兄弟を訪れることから始まる。そこで彼は結核にかかっていることがわかったため、その後7年にわたってそこに滞在することになる。その7年の滞在期間中に、彼は大戦前のヨーロッパの縮図を構成しているような様々な人物から学び成長していく。 …
『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』は、トーマス・マンの小説。幸運の星の下に生まれたライン河畔の商人の息子フェリーリクス・クルルが、周囲を欺きながら盗みと身分詐称の腕を磨き成功を重ねていく話で、一種の悪漢小説である。ルーマニア出身の19世紀の盗賊マノレスクの回想録を素材にしつつ、ゲーテの『詩と真実』を範として書かれたものだが、話の筋はマンの自己パロディという側面も持つ。『大公殿下』執筆後に着手され、1913年に中断。1922年にクルルの幼年時代のみを扱った第一部を刊行、1937年に断片的な第二部を加えた版が刊行、着手から40年越しの1954年になって第三部までが「回想第一部」として出版された。さらに第二部が書き継がれる予定であったが …
『ワイマルのロッテ』は、トーマス・マンの小説。1939年刊。ゲーテの著名な小説『若きウェルテルの悩み』のヒロイン・ロッテのモデルとなったシャルロッテとゲーテとの40年越しの再会を扱った作品である。宮廷顧問官夫人となっていたシャルロッテ・ケストナーは1816年に実際にヴァイマルを訪れゲーテと会っているが、ゲーテの日記には9月25日に1行触れているのみで詳細は書かれておらず、マンはそのわずかな記事をもとにゲーテ作品からの引用やフィクションも交えて長編小説に仕立てた。作中では老いたシャルロッテのもとを訪れる様々な人物がゲーテについて語り、ゲーテの秘書をしていたリーマー、ショーペンハウアーの妹アデーレ、そしてゲーテの息子のアウグストといった …
『ヨセフとその兄弟』は、トーマス・マンの小説。旧約聖書のヨセフの物語を大長編に仕立てた作品で、『ヤコブ物語』『若いヨセフ』『エジプトのヨセフ』『養う人ヨセフ』の4部からなる。ナチス政権下のドイツからの亡命をはさみ、18年にわたって書き継がれた。ヨセフとその父ヤコブの関係を軸に、フロイト心理学を援用しながら人類の和解とヒューマニズムの主題を扱っており、背景にはナチスの思想、特にローゼンベルクの『二十世紀の神話』に抗する意図があった。 …