こころの処方箋 (新潮文庫)
Blurb
臨床心理学者であり幾多のカウンセリングを手がけた著者が、普段私たちがこころのどこかでは納得しているが、なかなかことばにできないような常識をエッセイとしてまとめたものである。その内容は26作目を数える上前淳一郎の人気シリーズ「読むクスリ」に通じるものがあり、人々の疲れ気味のこころを癒してくれる。各章の目次タイトルは、「人のこころなどわかるはずがない」、「危機の際には生地がでてくる」「『理解ある親』をもつ子はたまらない」、「心の支えがたましいの重荷になる」など格言風に小気味よくまとめてあり、著者の専門家としての豊富な経験から調合された薬効ある文章が読者に語りかける。
また著者は遠藤周作の『生き上手、死に上手』から得られた「呪文」ということばを念頭に置き本書を手がけたという。「正しいとか正しくないとか、教えられるというのではなく「呪文」を唱えていると心が収まるのである」と著者は語り、自らも本書目次タイトルの1つを「唱えて」いるそうである。読者は自分の心に残った目次の言葉を選び、自分だけの「呪文」として楽しむことができるかもしれない。こころが少し風邪をひいてしまったなと思う読者や、自分自身の常識や創造性を振りかえってみたい読者には頼りがいのある1冊となるだろう。(青山浩子)
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