『砂の女』は、安部公房の書き下ろし長編小説。安部の代表的作品で、近代日本文学を代表する傑作の一つと見なされているだけでなく、海外でも評価が高い作品である。海辺の砂丘に昆虫採集にやって来た男が、女が一人住む砂穴の家に閉じ込められ、様々な手段で脱出を試みる物語。不思議な状況設定を写実的に表現しながら、砂の世界からの逃亡と失敗を繰り返していた男がやがて砂の生活に順応し、脱出の機会が訪れても逃げない姿に、市民社会の日常性や、そこに存在する人間の生命力の本質と真相が象徴的に描き出されている。 …
The nature of identity itself is the ostensible subject of this bizarrely fascinating existential novel from the great Japanese fiction writer and dramatist Kobo Abe. In the story, a man decides to give up the self that he has been all his life to attain a state of blissful anonymity. He leaves his world behind and …
『他人の顔』は、安部公房の長編小説。『砂の女』の次の長編で、「失踪三部作」の2作目となる。化学研究所の事故によって顔面に醜い火傷を負い「顔」を失った男が、精巧な「仮面」を作成し、自己回復のため妻を誘惑しようとする物語。新たな「他人の顔」をつけることにより、自我と社会、顔と社会、他人との関係性が考察されている。 1964年、雑誌『群像』1月号に掲載され、同年9月25日に講談社より単行本刊行された。1966年7月15日には安部自身の脚本で、勅使河原宏監督により映画化された。 …